「ウィキッド ふたりの魔女」と、「教皇選挙」を見てきました。結論から言いますと、どちらも最高でした。おすすめです。
というわけで今回の絵は、過去に生まれていたら確実に魔女と呼ばれていたであろうベリンダです。三億年ぶりくらいに趣味絵を描いた(オタク的誇張表現)。正確には二か月ぶり…いや三か月ぶり…?えっ怖…。
ともあれ、どちらも映画レビューサイトに長い感想文をしたためてきました。そのうちブログ記事にもしたいと思いますが、今回は感想の要点だけをネタバレなしで綴ります。
私から見ると、どちらも人間の善悪について、内省を促す物語でした。
「ウィキッド」でも「教皇選挙」でも、単に「悪」を悪として描いているのではなく「人間として誰しも持っている、または持ちうる悪徳」として描いています。
ほんの僅かでも「いい人だと思われよう」と、利己的な計算まじりの善行や善のふるまいをした事は、誰でもあるのではないでしょうか。
二つの作品に登場する人々は、誰も根っからの悪人ではない。みんな自分が「善」であり、正しいと思いたいあまり、自らの内なる悪に目を背け続けてきただけの、ごくありふれた人達だと思います。
この、人間誰しもが陥りやすい思考や状況について示唆しているのが「ウィキッド」であり、明確に作中で言及しているのが「教皇選挙」でした。
恐らく殆どの人は「ウィキッド」でエルファバに感情移入する、そう設計されていると思いますが、エルファバにも「悪」の部分、人間ならではの欠点があります。「ウィキッド」は政治的なメッセージが明確に込められた物語で、エルファバの欠点とグリンダの美点がわかった時、そして二人の根っこにある共通点を知った時、より鮮明になると思います。
「ウィキッド」は160分ほどの時間を感じさせない、非常によくできたミュージカルです。また、「パート1」で、物語の前編にあたるのですがそれでも満足度が高く、オチはしっかりついています。
殆どセットが作られているので合成で生じる違和感がほぼ無く、美術も音楽も素晴らしいです。ラストシーンは本当に凄いので、ミュージカルがお好きなら是非。絵やデザインに携わる人も、見て損は無いと思います。
私は初回冒頭を見逃してしまったので、二回見に行きました。お陰様で二回目は最初から泣いていました。今は沼に片足突っ込みかけています。パート2が怖い。今度は世界同時公開して欲しい。待てない。
「教皇選挙」は緊迫感とスピード感のあるミステリーです。カトリックについての知識はあると見易く、
・教皇がなくなると、世界中から枢機卿という高位聖職者がバチカンに集まって選挙を行う
・既定の票数が一人に集まらないと新教皇が決定しない
・一度の投票で新教皇が決定すると白い煙、決まらなかった場合は黒い煙を上げる
・決まらないと延々と投票が続く
・典礼にラテン語が用いられるため、聖職者ならラテン語が大体通じる
上記を押さえておくと大丈夫だと思います。教会が舞台であり、カトリック教会ならではの問題を取り上げつつも、その実として普遍的な社会問題を問いかける作品です。
「善人なおもて往生をとぐ、況や、悪人をや」浄土真宗「歎異抄」の有名な一説ですが、この「善人」の状態「自分が善人だと信じて疑わない『確信』」に陥らないために、この二作品は重要だと思います。
洋の東西を問わず、人間ならではの普遍的な問題だからこそ、形や言葉を変えて色んなところで語られているんでしょうね。