画像生成AIは剽窃物の寄せ集めであり、倫理的な問題と犯罪防止の観点から規制を求めます。絵描きとして技術に脅威に感じる事はありません。ですが無断転載と同様、私の絵を無断学習されるのは不快です。絵という表現についての話も併せて。
まず生成AIが脅威ではない件について言うと、現状データソースが無断学習=剽窃だからです。
大半のお客さんはメーカーや作家に対して倫理観と信頼性と社会性を求め、剽窃を忌避します。更に直接人間へ被害を齎すディープフェイクや児童ポルノの問題が顕在化した今、画像生成AIは倫理的にも問題しかありません。画像生成AIを使えば使った者の信用が落ちるだけです。そのため仕事では使えません。である以上脅威に感じる事もありません。
また、絵描きの観点からすると、画像生成AIの出力したものは単なるつぎはぎであり、人間らしいゆらぎが無いので面白味が全くありません。たとえばゲームのパーツ制作などの細かい注文に応える事もできないし、コンセプトをくみ取る事や細かい修正も難しい。
上記のいずれも踏まえた上で、私が在籍している会社は画像生成AIの使用を禁じています。
そして無断学習が不快なのは剽窃行為であると同時に、人の中に私の絵が刻まれないからです。
よく「模倣と生成AI学習は同じではないのか」という言説を聞きますが、全く違います。
私は絵を描いてきた中で、様々なものを模写し、様々な先駆者に影響されてその絵を何らかの形で模倣してきました。この世に存在する人物や事象と、先駆者である人々の絵やその思想の記憶は、人間という生物である私の感情と思考で解釈と再構築をされ、私の頭の中に刻まれています。何百年も前に生きた人と、現代の私が繋がる事が出来る手段でもあります。
同様に、私の絵を模写や模倣をした人達の頭の中には、その人の解釈と再構築を経て私の記憶が刻まれ、更にその人の絵に影響された人がまたそれを模倣し……。と、人間の思考を経る限り私はいつまでもどこかに繋がり、生き残る事が出来ます。私の絵が他者に見られ、他者へ影響を及ぼし、そして模写等をされる事で誰かの血肉となる。これ以上嬉しい事はありません。
絵は表現の一つです。そして表現は他者との対話と交流のためにあります。
ところが生成AIに学習させただけでは記憶は機械という無機物の狭い容量にそのまま収められ、生体の感情による解釈や再構築もされず、受け継がれる事がありません。志向性もなく、意思もなく、ただ雑多なデータの一つとなり、私が絵にこめた情念がくみ取られる事もない。そこにあるのは私ではない。切り刻まれたコラージュ元でしかなく、それを見た人の記憶に残る事もない。
このように、模倣と、無断学習などの剽窃には大きな隔たりがあります。
そういうわけで、私の作なのに私が他者に関わる事が出来ないから嫌なのです。
それにしてもX(旧Twitter)の騒動は大きいですね。私も今のところXのアカウントを削除する予定はありませんが、新しい絵を投稿する事は控えめになると思います。アカウント削除をしないのは、タイムスタンプとして機能させるためです。万が一何かしらの訴訟という事になったなら、私の方が先行して投稿していたという証拠になります。pixivなどのアカウントを消さないのも、そういった理由からです。
なので同じ絵描きの皆さまにも、確かに主義と反する企業のサービスを利用したくない気持ちはわかるのですが、盗まれる危険性がある以上、情報は残しておく事をおすすめします。
ネットに絵を掲載し始めて二十数年。セミプロだった頃から無断転載も無断トレースも盗作もされてきました。好意的な無断転載(私の絵だと紹介した上で私を宣伝している)もありますが、中にはサインをわざわざ消して「自作だ」と偽る悪意からのものも当然ありました。
また、私が剽窃をしたと一瞬疑われたらしき時も、むしろ私の絵の方が先行しており、剽窃元と思われているものの方が私の剽窃をしている疑いさえある。という事が判明し、すぐに鎮火したような形跡を見たこともありました。目に見える証拠は大事です。
言いたいことはまだ色々ありますが、本日は以上です。
私は個人サイトにずっといますので、何かあったらサイト内の「ABOUT ME」から各種利用サービス、SNSをご確認頂ければ幸いです。