家族の容貌を誉めるのは大変お恥ずかしい限りですが、実家の父は容姿が良く、つまるところ私はイケメン・イケオジのモデルケースがいる環境で育ってきました。誠に遺憾ながらこんな書き出しの今回は、父についてのだべり8割、残りは創作や社会に見るイケ像と、自創作や信条の齟齬についてです。
幼少期から友達やクラスメイト達に父の容貌を誉められ(諸事情でPTAには父が参加していました)、社会人になってから同僚達からも誉められてきた上、本人も自覚している(割とうざい)ので事実なのだと認めざるを得ません。ついでに言うと母の事も誉められていたので、小さい頃は「なぜ親の見た目を誉めるんだ?」と不思議に思っていました。
※余談ですが、私は両親に対して、かっこいい!美人!好き!などと思った事は全くありません。親へ対する子としての平凡な感情しか持っていません。
という言い訳をした上で表題の件について。父は所謂性風俗を利用した事がありません。たとえ付き合いでもキャバクラにも行かず、夜のお店は精々お得意先のバーやスナックに行く程度です。AVエロ本とも無縁で、強いて言えば私が「バガボンド」を貸したくらい。TV映画やドラマでお色気シーンが始まれば場が凍り付きますし、人を見下すお笑いを嫌います。
なんというかその、モテてしまうので不貞行為はした事があり、そういう面では個人的にイケオジじゃないと思っていますが。母には謝り倒していたので一旦それは置いておくとして。何が言いたいかというと、弱者や女性差別をしないんですよね。人間として当たり前の事だと思っているのですが、女性を「物」扱いもしないし性的消費を嫌悪する。ついでに好きな芸能人はオードリー・ヘプバーンただ一人だけです。
ところが漫画などを見ていると、男性キャラクターや主人公までもが性風俗を利用しているシーンがちょくちょく出てきます。性犯罪もギャグのように使われますし「性に貪欲で女性経験が豊富、一夜限りでさっぱり捨てるモテ男こそイケメン」と言わんばかりの作品もあったりしますよね。
とある創作企画の中で、私はよくおじさんキャラクターを自キャラとして動かしていました。そんな中、自キャラが性風俗に連れられて行く様子を交流として描いて頂いた事がありました。勿論、描いた方に悪気は全く無く「モテるキャラクターとしての味付け」として描いてくださった意図は理解しており、描いて下さった事にも感謝しています。
しかし「うちのイケオジは性に奔放じゃないし、女性を物扱いなんてしないけどなあ」とは思っていました。たとえ漫画で「イケ=モテ=性に奔放」という価値観が定着して氾濫しているのを見てきても、実在の身近なイケてる方の人間の行いは何よりの説得力があります。フィクションではない現実だから。
世の中には性欲が暴走したり、他人(女性)を蔑ろにするイケメンもいるのでしょうが、その時点でイケメンやイケオジとして認めないし、自分の創作では絶対にそうして描かない信条があるのもこのためです。
父は学生時代も社会人になってからも社交的かつ交友範囲の広いリーダー格(所謂番長タイプ)で、スポーツマンである事も余裕に繋がっているのかもしれません。その実内面は滅茶苦茶繊細で、ここが家庭内での欠点にもなっているのですが、マナーや身だしなみにも大変うるさく、デオドラントや香水を欠かさない。なので仕事は力仕事でも、父が不潔だったり臭かったりした事は一度としてありません。掃除好きでファッション好きでもあり、祖父も同じでした。
潔癖症なので外食以外では自分や家族が作ったもの以外口にしませんし。一応母にはきちんとしていて、薔薇の花束を臆面もなく贈ったり記念日を忘れないのも父の方です。あとは我々子ども達が小さい頃、本を読んで寝かしつけるのは父の仕事でしたし、遊びに付き合ってくれるのも父でした。
なので欠点を除いた父の行動を「イケてる基準=目指す姿」と認識している次第です。
というあくまで私個人の価値観ですが、「人間としての価値=モテて性に奔放な強者であり、他者を蔑ろにできる事」という歪な価値観が社会から消えれば、たぶんもう少し皆生きやすくなるのかも。と、漫画や小説、現実のつらい事件・経験談などを見ていて思う今日この頃でした。
余談ですが、実家は大分県です。最近「さす九」という言葉を目にする事があります。事務屋時代にはDVやストーカー、性被害事案を毎日のように見てきたので、言われる理由もわからなくもないです。しかし親世代の警察官達は当たり前の倫理観を持っていましたし、家族も同様だったので、九州に限らず薄っすら蔓延る田舎的なよろしくない価値観。そして現在、創作物やエンタメ、サブカルSNSによって強化蔓延しているものなのだろうなあと思います。
イケオジ観はもとより、創作作品に関わる人間としても倫理観は大事にしていきたいところです。